豊中の里山「島熊山」を生き物と共生する森に
島熊山の雑木林を守る会
2021.03.31
団体概要
島熊山の雑木林を守る会は、1991年に島熊山の一部に特別養護老人ホームを建設するにあたり、場所の変更を要望する市民によって設立されました。1996年には島熊山にヘリポート建設の話が持ち上がり、島熊山を残すため、地元自治会などと共に反対活動を行いました。
運動を行う中で、島熊山の自然のことをもっと知っておく必要があるということや自然環境に関心のあるメンバーが多かったことなどから、島熊山で自然観察会や手入れの活動を開始しました。現在、竹の間伐や枝の伐採、倒木の整備などの森の手入れ、希少植物などの自然調査、山の清掃などの活動を継続しています。
会員は40人弱で、そのうち日常的に活動に参加するのは20人程度です。50~70歳代が主体となっています。
島熊山とは
島熊山は千里ニュータウンが開発された際、新千里西町の西側(千里ニュータウンの外縁部)に残された緑地帯の一部です。緑地帯は高さ50~130mの稜線で、一番南側は大阪中央環状線と中国自動車道に隣接し、緑丘と新千里西町の境界線に沿って北に延び、新御堂筋を越えて、新千里北町へと連なっています。
島熊山は古くから歴史に登場します。5世紀頃には島熊山の周辺で利用されていたと思われる窯跡や須恵器が見つかっており、8世紀に書かれた『万葉集』の「玉かつま 島熊山の夕暮れに ひとりか君が 山路越ゆらむ」(詠み人知らず)という歌の中では、すでに「島熊山」という地名が登場しています。そして、1800年ごろの「摂津名所絵図」には、島熊山が谷や崖、大きな岩が多い、険しい山であったと記され、現在残っている島熊山の部分とその周辺地域の多くは千里緑地として指定されています。周辺地域では、バス停や交差点の名前として「島熊山」が使われており、島熊山の雑木林を守る会をはじめとした自然系の団体や地域住民は、千里緑地のことを「島熊山」と呼んでいます。
島熊山の植生は、以前はアカマツ林でしたが、現在は落葉広葉樹を中心とした雑木林となっており、アカマツ、コナラ、アベマキ、ネジキ、コバノミツバツツジなど多くの種類が存在しています。NPO法人とよなか市民環境会議アジェンダ21自然部会の希少植物調査(2017年発行)において、298種類の植物が確認されており、同調査では豊中市内で最も多い種類となっています。その一方で、雑木林にはモウソウチクが侵食し、雑木林の竹林化も進行するとともに、カシノナガキクイムシによるナラ枯れ問題なども発生しています。
また、豊中では数少ないタヌキやキツネの生息地でもあります。豊中に残されたわずかな自然環境ですが、樹林の中に入ると外の街並みがわからないほどの、都市の中の自然とは思えないような豊かな自然を体感することができます。
島熊山の雑木林を守る会の活動
島熊山の雑木林を守る会の活動は、千里緑地のうち、豊島高校周辺から新御堂筋までの間のエリアを主な活動範囲とし、雑木林の竹の伐採・整備を行う「森の手入れ」を毎月実施しています。成長が早い竹が広がることで日光を遮り、周囲の樹木が枯れてしまうことで、雑木林が竹林になってしまうという問題があります。昔は、人が里地里山から薪などの燃料や材木などの素材、食料などを手に入れることで、多様な生き物が共生できる場所でしたが、素材や食料を里地里山から得ることがなくなった現在は、島熊山だけでなく、全国的な課題となっています。
こうした里地里山という複雑な生態系の変化を全国レベルでとらえることをめざして、環境省は「モニタリング1000里地調査」を実施し、(公財)日本自然保護協会が全国各地のフィールドと連携して取り組んでいます。島熊山は「モニタリング1000里地調査」の植物相に指定され、毎月島熊山周辺の道路のごみ拾いを行う「清掃ハイク」の際に、植物種の調査を行い、定期的に報告を行っています。
この他に、3~11月にビオトープになっている緑丘配水場内の調整池を調査する「配水池トンボ池調査」、秋から春にかけて枯死したコナラの調査を毎週実施する「ナラ枯れ防止対策」、活動の参考とするために遠方へ日帰りで出かける「遠くを見て
近くを知る」活動などがあります。また、周辺自治会や関係団体、豊中市などで構成する「島熊山緑地協議会」にも中心的に参画し、大阪府から豊中市に移管された「島熊山緑地」(千里少年文化館から中央環状線までの間)の保全活動にも参加しています。
活動内容とはうらはらに、メンバーは自身の自然に対する興味・関心の中で、できる範囲の活動を無理せず主体的に行っており、メンバー間の交流も含めて、楽しみながら参加しておられます。また、反対運動をきっかけに発足した団体であるため、周辺の住民組織や各種団体、豊中市とも対話や連携を重ねてきた歴史があり、現在は島熊山周辺で活動すると同時に、多様なネットワークを形成しています。
参考:島熊山の雑木林を守る会ホームページ
https://simakumazouki.web.fc2.com/
伝えたい想い
島熊山の雑木林を守る会の発足当初から活動している代表の易さんから、「これからも島熊山の自然に親しみながら保全活動を続けていきたいと思います。また、近隣の小学校の皆さんにも自然観察会を通してさまざまな生き物と触れ合ってもらいたいと願っています」というコメントをいただきました。
島熊山が生き物と共生する森になることをめざして、同会の活動はこれからも地域の活力を生み出す団体として活躍していくことが期待されます。